大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(オ)1022号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔要旨〕山林に生立する立木を買い受けるにあたり、山林の範囲を直接売主から指示を受けず、世話人の指示を信じて買受の意思表示をしたからといつて、必ずしも買主に重大な過失があつたものとは云えない。

〔説明〕原告は、被告所有の甲山林に生立する立木中松、杉、檜を二〇万円で買い、内金一〇万円を支払つたが、原告が買いうけた山林と考えていた範囲には、訴外人所有の乙山林が包含されており、しかも甲より乙の部分の方が約一倍半の広さを有し、生立する立木の価値もはるかに大きいことがわかつた。原告がかかる誤信をするにいたつたのは、買受にあたり現地を案内してくれた者(三名)から、甲山林の範囲として、甲乙両者を合せた部分を指示された結果に外ならなかつた。そこで原告は、本件売買契約は、目的物の範囲につき重大な錯誤があつたのであり、これは民法九五条の要素の錯誤に該るから、右契約は無効であるとして、すでに支払つた一〇万円の返還を求めた。これに対して、被告は、仮に右契約には要素の錯誤があつたとしても、原告は売主自身から山林の範囲につき指示を受けず、立木歳数の検定もせず、当時の木材景気に酔い、飛びつき買をしたもので、表意者たる原告には重大な過失があると主張した。原審は、本件契約を要素に錯誤があるものとして無効と認め、重過失の有無については、原告が売主から山林の範囲につき直接指示をうける注意を欠いたことを指摘しつつ、「売主にも現地に同行を求めたところ、先に行つてくれというので、先に出発し現地で相当長い時間待つていたが遂に来なかつたので、売主から世話人が聞いて来たところに従つて指示をうけた(世話人は、売主から境界はアゴであると聞いて来たが、現地でそのアゴを見誤り、間違つた指示をしたものである)、世話人の内二名は売主と同部落の者であり、しかも一名は売主と親戚の間柄にあること」を確定し、現地の地形を考慮に入れて、本件で、原告が被告から直接指示を受けないで世話人の指示を信じ買受の意思表示をしたからといつて、原告に重大な過失があるものとは見られないと判断した。上告論旨は、原告の重過失を主張したが、判旨はこれを容れず、原審認定の事実関係によれば、原審が、被上告人(原告)は民法九五条但書にいわゆる重大な過失なくして本件売買契約を締結したものであるとした判断は正当である旨判示した。

本件のような場合は、結局事実が物を言うことになるので、一つの事例として紹介するわけである。

(三淵調査官)

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